【コラム】ゾレア(オマリズマブ)とは?世界初の抗体医薬が重症花粉症に適応
引用元:ノバルティス、抗IgE抗体製剤「ゾレア®」の剤形追加承認を取得 | ノバルティス | Novartis Japan
コロナウイルスの感染拡大とともに飛散し始めたスギ花粉で、日本各地でマスク不足が深刻化しています。そんな中、 2月13日に日本テレビ「スッキリ」で新たな花粉症治療薬として紹介されたのが「ゾレア」。
普通の薬が効かない場合に、ゾレアを使用すると2週間目には「ほぼ症状がなくなる」と、重症の花粉症患者にとっては正に希望の光とも言える新薬です。
ゾレア(一般名:オマリズマブ)は、花粉症のお薬が効かない重症の花粉症患者に使われる、皮下注射タイプのお薬です。ゾレアは抗体医薬と呼ばれる部類のお薬で初めて花粉症に適応が追加され、注目を集めています。
抗体医薬オマリズマブってどんな薬?
引用元:【花粉症2020】世界初 抗体医薬「ゾレア」登場…デザレックス供給再開、抗ヒスタミン薬も競争激しく | AnswersNews
オマリズマブは抗体医薬の一つですが、そもそも抗体医薬とはどのようなお薬なのでしょうか。ヒトの体はアレルゲンやウイルス等の異物(抗原)が入ってくると、抗体を作って抗原を排除する免疫機能があります。抗体医薬は人工的に抗体を作り出す医薬品であり、ヒトの体内で安全に機能する仕組みになっています。
花粉症は体内に花粉が入った時に作られるIgE抗体が、マスト細胞(肥満細胞)とくっついて同細胞を活性化させ、ヒスタミンやロイコトリエン等の化学伝達物質を放出して諸症状を引き起こします。
オマリズマブは皮下注射によって体内に取り込まれると、「抗IgE抗体」となってIgE抗体とくっつきます。オマリズマブとくっついたIgE抗体はマスト細胞とくっつかなくなり、同細胞の活性化および化学伝達物質の放出が抑えられ、症状を抑えます。つまりオマリズマブはIgE抗体とマスト細胞がくっつくのを「競合阻害」するのです。
ゾレアの治療に関して
引用元: ゾレアによる治療を受けるには | ゾレア:ノバルティスファーマ
お医者さんでゾレアの皮下注射を打ってもらうには、以下の条件を満たしていなければなりません。
- スギ花粉に対してアレルギーがある
- 花粉症の薬を使用したが、効き目が不十分で重症または最重症だった
- 血液中の総IgE値が30~1,500 IU/mLである
- 12歳以上で、体重が20~150kgである
上記の有無を確認するために、お医者さんでは治療の前に血液検査やアレルギーの検査を行います。
なお、重症は以下のうち一つでも当てはまる状態との事です。
- くしゃみ発作が1日11回以上
- 鼻水が1日11回以上
- 鼻づまりが非常につらく、口呼吸が1日にうちにかなりある
スギ花粉以外の花粉症(ヒノキ、ブタクサ、カモガヤ等)は比較的症状が軽いため、適応外となります。
過去に合併症やラテックス過敏症を起こしたことがある方は、注射によってアレルギー反応を引き起こす可能性があるので注意が必要です。
ゾレアの用法・用量および治療の流れ
ゾレアは1回につき75~600mgを皮下注射し、2週間もしくは4週間ごとに行います。花粉症が飛散する時期に応じて、月に1~2回通院するのが治療の流れです。
ゾレアを摂取する量は、体重とIgE抗体の量によって左右されてきますので、1回あたりの量および通院する間隔は個人差が出ます。
治療中は、自己判断で他の処方薬を減量もしくは中止しないでください。ゾレアは、すでに発症している症状を和らげる効果はありません。他の処方薬を減薬・中止したい場合には、必ず主治医の判断に従ってください。
ゾレアはIgE抗体の働きを抑え込むため、寄生虫に対する防御機能を低下させます。ゾレア治療中に寄生虫の感染リスクが高い地域へ旅行する際は十分にご注意ください。
ゾレアの副作用
引用元:ゾレアの副作用 | ゾレア:ノバルティスファーマ
ゾレアの主な副作用は、注射部位に見られる以下のような反応です。
- 腫れや赤み
- かゆみ
- 痛み
- 熱くなる
- 硬くなる
- 血が出る
その他にも、まれに以下のような副作用が起こる場合があります。
- 頭痛、発熱
- 眠気、めまい
- ほてり
- 疲労、倦怠感
- 消化不良
- 気分が悪くなる
- 手足の痛み
過敏症の症状に注意
ゾレアで特に注意すべき副作用は、以下の症状です。
- 蕁麻疹
- 全身のかゆみ
- 立ちくらみ
- 失神
- 唇、下、喉の奥の腫れ
- 呼吸困難
上記の症状が出た場合は過敏症(アナフィラキシーショック)を引き起こしている可能性がありますので、速やかにかかりつけの医師に診てもらってください。
ゾレアに対する世間の声
ゾレアはつい先日に花粉症への適応が追加されたばかりですので、実際に治療を行った患者の口コミ・評判は現状ありません。代わりにTwitterで散見された「世間の声」をいくつかピックアップしてみました。
テレビを見た一般大衆の声としてはやはり「本当に効くのならやってみたい!」という期待のツイートが多い一方、ゾレアについて見識のある医療関係者(?)からは「気軽に使えるものではない、安直な宣伝はいかがなものか」といった慎重派や否定派が散見されました。
実のところ、ゾレアの販売元であるノバルティスファーマ社は、過去に「ディオバン事件」と呼ばれる不祥事でニュースになった事があります。高血圧治療薬であるディオバンに関して、同社がお金に物を言わせて臨床データをねつ造し、薬の効能を上乗せしていたというショッキングな事件です。
事件後もノバルティスファーマ社は、以前として医師に多額の資金を提供しているようです。
参考:懲りない奴ら~ディオバン事件後も医師とカネの関係変わらず
そんなノバルティスファーマ社が販売している「ゾレア」ですが、果たして今回もまた多額の資金が流れたのでしょうか…?
真偽のほどは分かりませんが、何しろ過去に臨床データの改ざんを行った製薬会社ですので、あまり効果を鵜呑みにしない方が良いかも知れませんね。
ただ、保険適用前から使用しているという方から効果があったというツイートもあったので、花粉症のお薬が効かないような重症の方は試してみる価値はあるのではないでしょうか。
最大の問題は薬代だ。ゾレアは体内のIgEの量と体重によって投与量が決まる。1カ月にかかる薬代は、2週間に1回の投与で1万4023~11万1576円(健康保険の1~3割負担したときの値段)。
引用元:花粉症の最新治療は“世界初”の保険適用 今年の傾向と対策 (1/5) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)
ゾレアの皮下注射は保険適用になっても依然として高額ですので、治療費はそれなりの出費を覚悟しましょう。